【協力隊ブログ】有害鳥獣対策の見学~岡山県・玉野市の取り組み~

<青木 隊員>

こんにちは、地域おこし協力隊の青木藍です。
先日、岡山県の玉野市に行ってきました。玉野市では、市役所と猟友会が協力し、有害鳥獣の対策を行っています。知人を通じて、玉野市産業振興部農林水産課のイノシシ対策係の方と知り合ったので、見学に行ってきました。

岡山県ではイノシシの増加が著しく、人里への出没が大きな問題となっています。出没だけでなく、イノシシと車との交通事故や家屋への侵入など、人命に関わるような事故も発生しています。このため、玉野市では地元猟友会と市役所が協力し、対策にあたっており、長年、猟師としてのキャリアと信頼がある方がイノシシ対策係である有害鳥獣対策員として市役所に勤務し、罠の設置から捕獲まで行っています。
市役所が猟師からのアドバイスをもとに捕獲活動が出来るので、実績を大きく上げており、去年のイノシシ捕獲数は1年間に472頭、今年は600頭以上の捕獲が見込まれているそうです。現在のように市役所と猟友会が協力して捕獲にあたる体制が出来上がるまで、約10年の年月がかかったとのことでした。

玉野市ではあまりにもイノシシの数が多いので、1匹ずつしか捕獲できないくくり罠でなく、群れごと捕獲できるよう箱罠を活用しています。箱罠は一般に販売されているものより大型で、猟師の皆さんで設計し、鉄工所で特注製作されたものを使っていました。効率的な捕獲のため、エサの巻き方や仕掛けにも工夫がされており、驚きの連続でした。

▲仕掛けている箱罠の様子

 

▲箱罠の中の仕掛けの工夫:丸太を餌の上に置き、イノシシが鼻で丸太を動かしたら罠が作動します。

 

▲イノシシをおびき寄せるエサ:米ぬかにスイカやメロンなどの皮を入れ、イノシシが好む味付けにしています。

 

私が見学に行った日には2つの箱罠でウリ坊サイズのイノシシが4頭、次の日にも2つの箱罠で5頭のイノシシが捕獲されました。そのうち1頭は50㎏程の大きなもので、罠の中で暴れる迫力に改めてイノシシの危険性を強く感じました。 

▲箱罠の中で暴れるイノシシ:立ち上がると1.5mほどありました。罠のメッシュに噛みついています。

 

また、捕獲したイノシシの処分方法ですが、山に埋没する他にはなんと肥料に活用しているとのことでした。3メートルほどの高さがある樽の中にイノシシとシイタケ栽培で使った後のおがくず、鉄分を補う肥料、発酵を促進させる農業資材を入れて1年かけて発酵させると、とても良い肥料になるとのことでした。
作った肥料は農家さんが野菜の栽培に使っています。特にナスによく効き、とろけるように柔らかくおいしい実が出来るそうです。ただ、与えすぎると植物が枯れてしまうほど、この肥料には栄養分があるので、施肥をする際には注意が必要とのことでした。

▲手前にあるのがシイタケ栽培に使った後のおがくずで、奥の樽でイノシシと一緒に発酵させ、肥料にしています。

 

▲肥料になったイノシシ:骨の中のカルシウム、カリウムがとても良い肥料になるそうです。

 

2日間の見学のなかで、たくさんのお話を聞かせて頂きました。中でもイノシシの体色が明るい茶色になり、黒いものがいなくなったこと、警戒心が薄くなり、行動が大胆になっていること、体格が小さくても子供を産むようになっていることなど、今と20年前のイノシシでは行動も生態も変化してきているとのお話がとても印象深く残っています。他にも道路で交通事故にあい暴れるイノシシを取り押さえた話(!!)や、空き家に侵入したイノシシを槍1本で仕留めたことなど、様々な事件のお話がありました。
イノシシだけでなく鳥獣の数が増加するにつれ、こうした事件も増加することが予想されます。今後、鳥獣対策がますます市民から求められる時代になっていくことが感じられました。

現在、新宮ではなかなかイノシシが箱罠に入らず、放置されている箱罠がたくさんあるのが現状です。教えて頂いたコツを思い出しながら、新宮でも箱罠での捕獲実績が出せるよう工夫をしていきたいと思いました。